■森の中に佇む美しいスタジアム

 10月のキエフは冷たい雨が降っていました。

 当時のスタディオンNSKオリンピスキーは屋根もないボウル状のスタジアムで雨に煙っていました。気温も17時の試合開始時に11度。何とも寒い一日でしたし、地下鉄でスリの被害に遭ったりしたので、この時はキエフに対してあまり好印象を持てませんでした。旅行の思い出というのは、その時の気候などにも大いに影響を受けるものです(「蹴球放浪記」第35回「バンコクで電話工事」の巻参照)。

 この時の良い思い出といえば、ブロヒンのサインとともに、ディナモ・キエフのホーム、スタディオン・ディナモ・ヴァレリー・ロバノフスキーを見学したことです。ロバノフスキーは元ソ連代表監督でディナモ・キエフ監督と兼任。ディナモ・キエフ主体のソ連代表を率いて1988年EUROで準優勝しています。

 スタジアムを含むディナモのスポーツ・コンプレックスの入口は閉まっていたのですが、門番に頼んだら簡単に入れてくれました。

 ディナモはビッグマッチでは7万人収容のオリンピスキーを使用しますが、本当のホームはこのロバノフスキー・スタジアム。収容1万7000という小さなスタジアムですが、森の中に佇むとても美しいスタジアムでした。

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