■たとえ敗戦の悔しさが募っても

「敗軍の将は兵を語らず」という言葉がある。出典は紀元前に書かれた前漢の史書『史記』である。「戦いに敗れた将軍はその戦いについてあれこれ言うべきではないし、兵法の理論などを説く資格もない」というような意味で使われる言葉だが、Jリーグでは「敗軍の将」にも「兵(兵法)」を語らせるのである。

 試合に敗れてはらわたが煮えくり返っているようなときに記者たちに向き合い、ときに不作法な、そしてときに挑発的な、また非難するような口調の質問を受けるのが楽しいはずがない。しかしそれでも監督たちは出てきて話をし、きちんと質問に答えてくれる。本当にありがたいと思う。そして、勝った監督たちの言葉よりも、負けた監督たちの言葉や態度に、ときおり、私は、人間的な強さや気高さを感じてきたのである。

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