■相手の上を行ったセットプレーの有効性

 高川学園は青森山田に対して5人のDFを並べて対抗した。

 とにかく失点を抑えて、セットプレーかカウンターによる“一発”に懸けたわけである。たしかに、あれだけの戦力の差があれば、それが勝利の確率を上げる最良の選択だったのは間違いないだろう。

 だが、開始3分に青森山田の方がセットプレー(FK)から先制。前半のうちにCKから2点目を決められた時点で勝敗は決してしまった。“強者”である青森山田の方がセットプレーから得点を重ねたわけである。

 青森山田は、セットプレーを実に有効に使った。

 決勝戦でも、前半37分の先制点はCKからだった。藤森颯太の左CKの場面。ファーサイドにいたDFの丸山大和がニアサイドに向かって走り込む。藤森のキックは、その丸山の頭にピンポイントで届いた。完全にパターン通りのCKだった。

 そして、青森山田はCKのバリエーションが実に豊富だった。ニアサイドに速いボールを蹴ったり、同じニアでもグラウンダーのボールを入れたり、ファーサイドに直線的に入れたり、高いフワッとしたボールを入れたり……。左CKは藤森の右足、右CKはキャプテンの松本玖生の左足と決まっているが、時折、キッカーを変えることもある。

 それが、青森山田の最大の武器だった。

 青森山田との試合ともなれば、対戦相手は当然のように守備を固めてくる。いくら戦力に差があると言っても、守りを固める相手を崩すことは容易ではない。そんな時に、セットプレーが非常に有効なのだ。

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