【「圧巻の優勝」から見えるもの】最高の武器を選択し続けた青森山田高校【全国高校選手権を通じて考えるサッカーの奥深さ】(1)の画像
圧倒的な強さで頂点に立った青森山田高校 撮影/渡辺航滋(Sony α1使用)

 全国高校サッカー選手権大会の記念すべき第100回大会は、青森山田高校が制した。抜きんでた強さを示した一方で、細部にまでこだわる勝利へ徹底する姿勢も見せていた。また、敗れた側に立てば違う見方ができる。サッカージャーナリスト・後藤健生が、高校サッカーを通じて、あらゆる角度からサッカーの奥深さを考える。

■話題のCKと、その対策

 今年度で「第100回」を迎えた全国高等学校サッカー選手権大会では、青森山田高校が圧倒的な強さで優勝した。

 準決勝では山口県の高川学園を6対0、決勝戦では熊本県の大津高校を4対0という大差で破っての優勝だった。決勝戦では大津にシュートを1本も撃たせないという完勝。高川学園もシュートわずかに2本に抑え込まれてしまった。

 今年度の大会で話題になったのが高川学園が取り入れた、あの“グルグルCK”だった(「トルメンタ」とスペイン語を使うともっともらしく聞こえるのだが……)。たしかに、目新しい方法で、対戦相手としてはマークの付け方の約束事をはずされてしまうのだろう。そこに意識を向けられて集中を保てないという効果もあるかもしれない。

 準決勝で対戦することになった青森山田は、さっそくトレーニングで控え選手にこれを再現させてCKの場面での守備対策を練っていたと伝えられている。圧倒的な戦力の差があっても、細部にもこだわって準備をするあたりが、さすがに常勝軍団の青森山田らしいところだ。

 だが、この試合の高川学園のCKはゼロ。そして、青森山田のゴールキックは1本だけだった。つまり、高川学園が青森山田陣内のゴールラインまで辿り着いたのが、わずか1回だけだったというわけである。CKやゴール近くでのFKを獲得することができなければ、いくらセットプレーのトリックを用意しても勝負にはならない。

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