■意図的に使われていた「捨て球」
とくに、決勝戦では青森山田は慎重の上にも慎重に戦っていた。
準決勝の高川学園との試合は青森山田の大勝に終わったが、細かい部分では青森山田にも攻守にわたってミスが多発した。パスがズレてタッチラインやゴールラインを割ってしまったり、マークの受け渡しがうまくいかなかったりする場面が何度もあった。強い相手だったら、致命的なミスになりかねないミスだった。
そんな反省点があったのだろう。決勝戦では青森山田はけっして無理にパスをつないだりしなかった。つなぐのが難しいと見れば、割り切ってロングボールを蹴り込んだ。いわゆる“捨て球”だった。相手にポゼッションは渡してしまうが、危険な場面でカットされてショートカウンターを受けるリスクを避けようとしたのだ。
一見すると、青森山田がパスミスをしているように見えるかもしれないが、それは意図的にやっていたことなのだ。
したがって、攻撃のリズムがなかなか生まれないで、時間だけが経過していった。そのままゼロに抑えられていると、いつかはセットプレーやカウンターで失点する危険があるのがサッカーという番狂わせの多い競技なのだ。
そこで、威力を発揮したのがセットプレーというわけだ。
数多く準備したCKのパターンを駆使して、37分に先制ゴールを決めた青森山田は、その後も着実に得点を重ねて、3年ぶりの優勝を確実につかみ取った。