■中東開催だからこその誤算
4年に一度開かれるワールドカップは、見方を変えると世界のフットボール見本市でもある。この世界大会での活躍で、ヨーロッパのクラブ、しかもビッグクラブから引き抜かれることは少なくない。裏返すと、大会後の大きなビジネスチャンスに懸けるため、ワールドカップの直前に移籍をすることはまずないのだ。
ただし、カタールで開かれるワールドカップは違う。カタールの気候条件を鑑みて、通常ならばヨーロッパの移籍期間の前である6月から7月にかけての開催ではなく、マーケットがとっくにクローズされた秋に開かれることになっているのだ。
通常通りの2022年大会ならば、ムバッペとネイマールという2人の世界的スターがカタールの庇護を受け、世界にその名を知らしめる。しかし、カタール・ワールドカップが開幕する11月、これまで大金をつぎ込み大切に育ててきたムバッペは、カタールマネーのくびきを逃れている公算が大きい。つまりは、これまでの努力が、すべて水泡に帰することとなる。
そうしたプランを見抜いて、さらなる逆算で触手を伸ばしたわけではないとは考えられる。ただし、ムバッペの移籍先の第一候補、レアル・マドリードの首領であるフロレンティーノ・ペレス会長に、以前から“国家クラブ”の戦略に一石を投じようとしていた節があることは事実である。