■追加点後の名古屋ベンチから見る「徹底した共有事項」

 稲垣が追加点を決めて、名古屋の選手たちが一斉に稲垣のもとへと集まり、祝福と喜びの絶頂にいた直後のことだった。その輪の中にいた何人かの選手が、冷静な表情に切り替わり、すぐにベンチに向かったのだった。

 キャプテンマークをつけたDF中谷進之介や途中交代で投入されたMF長澤和輝らが、ベンチにいるマッシモ・フィッカデンティ監督やスタッフのもとへと急いだ。フィッカデンティ監督は、選手たちにボードを提示し、追加点後の対応を説明している様子だった。選手たちは何度も頷きながら、指揮官の指示を共有する。

 そして、先に集まった選手たちが、「早くベンチに来て確認しろ」というようなジェスチャーをほかの選手たちに送った。DF吉田豊ら守備陣の選手、MFマテウスら外国籍選手たちを呼び寄せ、フィッカデンティ監督が同様にボードを提示しながら指示を送る。

 実際、名古屋は追加点後にフォーメーションを変更し、5バックで守備に徹した。フィッカデンティ監督は、試合後の会見で、「(3日前に)天皇杯で対戦して負けた相手だったので、特に後半から試合の終盤にかけては、不利なものが出やすいだろうと思っていた。その中で、システムを5-4-1や5-3-2にしたが、選手たちが理解してくれたので乗り切れた」と話した。また、中谷も「こういう状況になったらこうしようとか、相手がこうしたらこうしようとか、今日は決まり事がたくさんあった。それはハーフタイムのロッカーでも、みんなで共有することができました」と明かす。

 察するに、おそらく追加点後のベンチでの動きは、フォーメーションの変更点や終盤までにやるべきことを再確認していたのだろう。このチーム内での戦術の“共有力”こそが、名古屋にタイトルをもたらしたと言える。そして、監督や選手たちが共有していたものは、戦術の理解度だけではなかったようだ。

 

■試合結果

名古屋グランパス 2―0 セレッソ大阪

 

■得点

47分 前田直輝(名古屋グランパス)

79分 稲垣祥(名古屋グランパス)

  1. 1
  2. 2
  3. 3