■今こそホームタウン制度の再確認を

 放映権収入もスポンサー収入も、「多くの人が関心や興味をもち、スタジアムがたくさんの観客で活気を帯びている」という状況があって初めて放送局や企業が「それでは放送しよう、それではスポンサーになろう」と思うのである。閑古鳥が鳴くスタジアムでしている試合を、誰が放送したいと思うだろう。誰がスポンサーになって、リーグやクラブを支えながら自社の活動や名前を知ってもらおうと考えるだろう。

 スタジアムに来てくれる人を何よりも大事にするという川淵さんの姿勢が「ホームタウン」という思想を生み、それを各クラブのスタッフ一人ひとりが心から信じて活動していることで現在のJリーグは存在している。また、2021年現在で40都道府県に57クラブという驚異的な広がりを見せながらもなお、全国にJリーグ昇格を希望するクラブが数十も存在するという事実が、「ホームタウン制度」の重要性を見事に証明している。

 Jリーグのクラブは、ホームタウンの支えなしに存続することはできない。ホームタウンを超えた事業展開については、個々に調整し、状況を見ながら進めていくべきことだが、「ホームタウン制度」そのものがなければJリーグは生きられないということを、このタイミングで、Jリーグ、クラブ、ファン、サポーター、自治体など、Jリーグにかかわるすべての人が再確認しなければならない。

 何よりも、村井チェアマンを筆頭としたJリーグの役員、スタッフ、そしてクラブ経営を預かる人びとに、この再確認を強く呼び掛けたいと思う。

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