【日本サッカーの未来を拓く鍵】「動きすぎない」「タイミング」上田綺世が醸し出していた「怖さ」の源泉【鹿島アントラーズvsFC東京から見えたもの】(2)の画像
FC東京戦での上田は確かに怖さを醸し出していた 撮影:原悦生(SONY α9Ⅱ使用)

 今、日本代表を取り巻く環境は芳しいものではない。だが、代表チームとは突然急成長するものではなく、サッカーのある日々が底上げを果たしていくものだ。サッカージャーナリスト・後藤健生は、10月23日のJ1第33節、FC東京鹿島アントラーズの対戦から未来を拓く鍵を見出した。

■CF最大の怖さとは

 上田綺世は、昨シーズンの終盤戦に何本か素晴らしいゴールを決めていた。最も印象的だったのは、日産スタジアムでの横浜F・マリノス戦で後方からのパスを空中でコントロールして、その落ち際を叩いたボレーシュートだった。

 それで、僕は延期された東京オリンピックも開かれる2021年には上田が“大化け”するのではないかと期待していたのである。

 だが、時折素晴らしいシュートも決めてはいたものの、上田が急成長したという印象はなかったし、オリンピックで開幕前に故障したこともあって、上田はオリンピックでも影の存在となってしまった。

 しかし、第33節のFC東京戦での上田は、得点シーン以外でもCFとして一皮むけたプレーをしていた。

 たとえば、動き過ぎないこと。

 つまり、ゴールを決めることを主任務とするCFとして、我慢して相手ゴールに近い位置で動かないことを覚えたように見えたのだ。

 現代サッカーにおいてFWというのは、ただ攻撃さえできればいいという存在ではなくなった。前線からプレスをかけて相手のパスコースを限定するなど、守備の仕事もしっかりとこなさなければならない。

 それはそうなのだが、彼らにとっての最大の任務は「点を取ること」である。シュートのうまいFWにゴール前に張っていられるのは、相手チームにとって怖いことだ。

 ところが、真面目な日本のFWの多くは、守備をするために、あるいは数多くボールに触るために、ついつい中盤まで下りてきてしまうのだ。

 もちろん、そういう運動量のあるCFや、前線で守備に体を張るCFもいていい。だが、相手守備陣にとってやはり一番怖いのはゴール前で常に得点を狙っているCFだろう。

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