【JリーグがセリエAに学ぶべき点】様々なクラブから代表選手を選んだマンチーニの「成功」【イタリア代表をEURO優勝に導いた国内リーグの「超拮抗」】(3)の画像
様々なクラブから選手が集まった「我らの代表チーム」の欧州制覇に、イタリア中が湧いた 写真:AFP/アフロ

 ヨーロッパでは、各国の顔となる数クラブが国内リーグをけん引する構図が通例となっている。さらに厳然たるヒエラルキーは欧州全土へと広がり、頂点への長い坂道を形成している。
 その図式の中で、イタリアでは長年にわたり、ユヴェントスの1強ぶりが目立ってきた。世界最高峰リーグと呼ばれた時代は遠い昔。セリエAは落ち込みが続いていた。
 しかし、W杯予選敗退というどん底を前後して、「開き直りの挑戦」への機運が高まり、リーグの競争力が激化。リードする存在はなくなったものの、リーグ全体の底上げ、さらには代表チームのEURO制覇へとつながった。
 拮抗したリーグでのクラブ間の競争の活性化、新戦力の台頭と代表チームへの還元…。現在のセリエAには、やはり世界でも珍しい「超拮抗リーグ」Jリーグが学ぶべき点が透けて見えてくる。

イタリア代表のメインを占めた「セブンシスターズ組」

 上位勢の競争が増し、一部のプロヴィンチャ(地方の中小クラブ)が中堅として立場を確立すれば、リーグ全体と代表の地力も高まる。その恩恵で、マンチーニはバランスよく、様々なクラブから選手を呼ぶことができるようになった。EUROに招集した26人のうち、「セブンシスターズ」在籍は16名。チェルシーパリ・サンジェルマン所属が4名、デ・ゼルビのサッスオーロの主力が3名だ。

 リーグの力が拮抗し、複数クラブからバランスよく選手が集まれば、その国の代表は大きな成果を残せる――もちろん、そんな保証はない。

 近年のW杯やEUROを制した国をみても、スペインやドイツ、フランスには、それぞれ頭ひとつ抜け出たチームがいる。ラ・リーガでレアル・マドリーやバルセロナブンデスリーガバイエルン・ミュンヘンリーグアンでパリ・サンジェルマンが別格なのは確かだ。

 一方で、EURO2016を制したポルトガルは、ポルト、ベンフィカスポルティングの3強が競うリーグだ。今回のEURO決勝をイタリアと戦ったのが、高レベルのトップクラブを複数抱えるプレミアリーグを擁するイングランドだったことも、偶然ではないかもしれない。

 1リーグ制に戻ってからの4年間、Jリーグは川崎フロンターレが3回優勝した。その4シーズンでは上位の顔ぶれが変わり続け、トップ5に名を連ねたのは鹿島アントラーズだけだった。今季も川崎が首位を独走したが、シーズン中盤には横浜F・マリノスが川崎を猛追し、一時は勝ち点1差にまで詰め寄った。AFCチャンピオンズリーグACL)出場権をめぐる3位争いなど、上位でも拮抗した展開が続いている。一方で、躍進したチームが翌年には1部リーグ残留危機にあえぐことも珍しくないという、恐ろしいほどに気の抜けないリーグである。

 サッカーにおいて、優勝という正解を必ず導き出せる式は存在しない。ただ、上位勢がしのぎを削り、リーグ全体の競争力が高まることは、ひとつの解となる可能性はある。ユーヴェ1強から戦力の拮抗へと移り、代表チームの強化にもつなげたイタリアの変遷は、現在のJリーグと日本サッカーにとって参考となるかもしれない。

  1. 1
  2. 2
  3. 3