■伝統への回帰か、慣習への固執か

 いずれにしても、大切なのは継続力だ。リーグが拮抗してレベルアップを成し遂げても、長続きしなければ、現在世界トップのプレミアリーグには追いつけない。その意味で興味深いのは、「欧州型」を意識しても、イタリアらしさが完全に失われてはいないことだ。

 例えば、昨季のインテルで一時期導入を目指したハイプレスを断念し、ロメル・ルカクを軸とした速いカウンターに専念することを選んだアントニオ・コンテは、国内を制覇してもCLでは早期敗退に終わった。その姿勢と戦い方に対する批判も少なくない。

 改革に失敗したユヴェントスは、マッシミリアーノ・アッレグリを呼び戻し、守備第一を重視したスタイルに戻りつつある。インテンシティーよりも展開に応じた対応力で結果をもぎ取ることを最優先するのは、よく言えば伝統への回帰、悪く言えば古き慣習への固執だ。

 だが実際、アッレグリが5連覇を遂げたユヴェントスは、リーグ最少失点だった。昨季の王者インテルも、今季首位に立っているナポリもまた、リーグ最少失点だ。現在2位のミランも、リーグ2位の失点数に抑えている。カテナッチョはなくなったが、守備重視のDNAが消滅することはない。

 「欧州型」を取り入れつつも、らしさが残るリーグとなりつつあるイタリアサッカーが、完全復活を遂げるのか、衰退していくのかは、時間だけが教えてくれる。ただ、様々なスタイルのクラブが高レベルで競っていくのは、単純に見る者を魅了するはずだ。少なくとも、国内外におけるカルチョへの熱は、数年前より高まっているように感じる。

 カルチョ界が進む先に待つのは、さらなる栄光なのか。それとも、再び下り坂を迎えるのか。

 ある意味で、イタリアサッカーは終わった。だがすでに、新しいイタリアサッカーは始まっている。

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