■男子以上に世界で評価の高い日本の女子選手たち
男子のJリーグでは、最近は海外移籍によって若手選手が次々とクラブを離れて行ってしまうので、国内リーグが空洞化してしまうという懸念すべき状況が生じている。
もちろん、日本サッカーの強化のためには若いうちから海外に挑む選手が増えるのは歓迎すべきことなのだが(若手が海外クラブから評価されているということでもある)、しかし、国内リーグの人気という意味では若手の有望選手が流出してしまうのは望ましい状況ではない。つまり、等々力陸上競技場に観戦に行っても、三笘薫のあの独特のドリブルも田中碧の必殺のスルーパスはもう見られないのだ(その意味で、最近になって、長友佑都や酒井宏樹、乾貴士、大迫勇也といった代表経験者がJリーグに戻って来てくれているのは嬉しいことだ)。
女子の世界でも、アメリカに続いてヨーロッパでも本格的なプロ化が進んでいる。そこで、日本代表クラスの選手たちも、良い環境や高い競技レベルを求めて海外クラブと契約する選手が増えてきているのだ。日本は女子サッカーの世界では、ワールドカップ優勝経験国なのだから、男子選手以上に日本の女子選手たちは海外でも高く評価されている。
アーセナルでは夏の移籍期間に加入した日本代表の冨安健洋がデビューと同時にチームに溶け込んで9月の月間MVPに選ばれて大きな話題となったが、女子チームでも8月に加入した岩渕真奈が早速活躍し、8月のPSV戦でのゴールがクラブの月間ベストゴールに選ばれている。
女子のプロリーグが発足したのは、女子選手たちの待遇を改善することが大きな目標だった。それによって、女子のトップクラスの選手たちの海外流出がストップできればいいのだが、日本の選手の場合、海外への挑戦は単に待遇のためだけでなく、ハイレベルな競争に身を置くことで選手として成長することが目的という場合も多い。
日本のスター候補の若手有病株が海外流出することのない用意するには、待遇改善だけでなく、リーグのレベルアップを実現することも必要なのだ。