■オーストラリア戦の4-3-3は有効なオプションに

 取りこぼしが許されないなかで、11月はベトナム、オマーンとのアウェイ連戦に挑む。ベトナムはここまで4連敗だが、オーストラリア戦を除く3試合で得点をあげている。一発を秘めている相手のホームへ乗り込むのだ。十分な警戒を持って臨むべきだ。

 9月のオマーン戦と10月のサウジアラビア戦の黒星は、いずれも連戦の1試合目だった。森保一監督も「この4試合の戦いで敗戦をしたのがそれぞれの代表ウイークの初戦でした。初戦をどうやって勝っていくかということを、過去の敗戦を分析して結果につなげられるようにしないといけない」と話している。

 ポジティブな材料がないわけではない。

 7日のオーストラリア戦で、森保監督は4-3-3のシステムを採用した。4-2-3-1のシステムを変えることはなく、選手交代で変化をつけようしてきたこれまでと異なり、負けられない一戦で戦術に手を入れたのである。

 中盤には田中碧守田英正を起用した。直前のサウジアラビア戦で、柴崎岳が失点に直結するパスミスを冒していたことを踏まえると、選手の入れ替えは妥当である。それにしても、遠藤航のパートナーとして守田を起用するのではなく、アンカーと2枚のインサイドハーフで中盤を構成したのは英断だった。

 遠藤と守田は、3月から5月の試合で連続して起用され、高いクオリティを発揮した。遠藤と田中碧は、東京五輪でパートナーを組んだ。守田と田中碧は、かつて川崎フロンターレでともにプレーしていた。3人がお互いの特徴を理解し、なおかつ適切な立ち位置を取れることで、ぶっつけ本番と思わせないスムーズな連携を見せた。アンカーの遠藤が好調時の力強さを取り戻し、ふたりをサポートしながら攻撃に関わっていったことも、4-3-3のシステムを機能させただろう。

 8分の先制点は田中がゲットし、86分の決勝点はオウンゴールは途中出場の浅野拓磨のシュートがきっかけとなった。森保監督の采配が、2対1の勝利を引き寄せたのだ。監督にも選手にも、自信回復につながる勝利である。

 システムの細部をチェックしていくと、改善点はもちろんある。失点シーンはスライドがうまくいかなかったことが原因で、最終的に守田がスライディングで相手を止めることになった。このプレーが反則なって直接FKを決められたのだが、守田が止めなければ決定的なシュートを打たれていただろう。失点は避けがたいものだった、と言える。

 課題がありながらも勝ったことで、修正はスムーズに、なおかつポジティブに行なわれていく。4-3-3の機能性を高めていくことができるだろう。

 オーストラリア戦では右サイドで伊東純也が幅を取り、左サイドでは長友佑都の攻め上がりが相手守備陣を広げていた。ベトナムは個人の能力ではなく組織で対応する。彼らの守備ブロックを広げるのは、得点奪取の足がかりになる。4-2-3-1と4-3-3を使い分けられるようになったのは、その意味でも大きい。

 システムもスタメンも分かりやすかったこれまでと異なり、ベトナム側はスカウティングに頭を悩ませるだろう。オーストラリア戦には久保建英堂安律が招集されていない。鎌田大地も出場していない。ベトナムやオマーンからすると、システムもスタメンも読みにくいはずだ。

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