■名古屋に勝利を与え続けてきた監督

 マッシモ・フィッカデンティは、これまで名古屋に勝利を与え続けてきた監督だ。そのサッカーはとても手堅く、常に“最少失点”といった守備の看板を掲げる。誤解を恐れず言えば、派手さはない。その代わりに、きっちりと勝利を手にする勝負師のたたずまいすらチームに漂っている。

 攻守で言えば「守」に重きを置いているため、「攻」では時には拙攻も目立つ。名古屋がタイトルとともに目指すのは、いや、タイトルの向こうに目指すのは「攻」の進化だ。すでに書いた通り、名古屋は勝負師としての性格を持っている。まずはタイトルの獲得を最優先するだろうから、「攻」の進化はそのあとに回すだろう。

 名古屋にとって、「攻」は対局的な言葉であり、なおかつ、天敵でもある。今年の春に川崎フロンターレとの連戦を戦ったが、その際、フューチャーされたのは「最強の矛vs最強の盾」というキーワードだ。最多得点のチームと最少失点のチームがぶつかったらどうなるのか。結果を言えば、矛が盾を破った。初戦は0-4で、2戦目は2-3。守備は崩され、2試合合計で7失点もしてしまった。その時から、名古屋は「攻」を意識した。フロンターレとの試合の途中から、“最強の盾”を構えるための4-2-3-1から4-3-3へとシステムも変更した。さらなるタイトルを得るには、盾を分厚くしながら矛先を磨く必要がある。

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