■「本場でカニを食いたい」
「陽澄湖」。あの上海ガニの産地として有名な湖です。この湖で獲れるカニは「陽澄湖大閘蟹」と呼ばれて珍重されて高値が付くので産地偽装が問題になっているのです。湖のそばには、カニ専門店が並んでいるということです……。
そこで、僕の“食い意地”にスイッチが入りました。せっかくなら「本場でカニを食いたい」と。
この時、中国滞在は4泊だけ。日本の3戦目(北朝鮮戦)を見た翌日に再び崑山に移動して韓国対オーストラリアを観戦してから上海に移動して、夜の飛行機で帰国する予定でした。そこで、その最終日に陽澄湖まで行ってみることにしました。
中国に詳しい日本の知人にメールしたら「シーズンオフに行っても何もないよ」と言われたんですが、「いや、オフでも観光客向けの店が少しは開いているだろう」と思っていたのです。
バスを降りると「巴解園」というテーマパークがありました。巴解というのは伝説上の人物で、この地に巴城という街を作るために水路を整備したそうです。ところが、足がいっぱいある虫が出てきて工事が進まないので、これに熱湯をかけて退治したところ、赤くなって食べることができた。それで、その虫は「解の虫」つまり「蟹」と呼ばれるようになったそうです。
テーマパークは蟹づくし、男性用トイレの例の“的”も蟹さんでした。しかし、やはりシーズンオフということで客はほんの数人しか見かけませんでした。
テーマパークを出て街に向かいます。
壮観でした。道路の両側に、すべて赤い文字で「〇〇蟹荘」とか「××蟹楼」とか書いてある蟹専門レストランが100軒以上軒を連ねているのです。
ただし、全部閉まっていました。
近所の住民以外に誰も歩いていません。広めの道路はガラガラ、まるでゴーストラウンです。たしかに知人の言った通り、何もありませんでした。
僕は蟹を諦めて、スタジアムに移動。そばのレストランでナシゴレンを食べました。いつか、リベンジしてやるゾ!