後藤健生の「蹴球放浪記」連載第79回「ゴーストタウンのような蟹街」の巻(2)「カニづくしのはずなのに」の画像
哀愁の蟹街 写真提供/後藤健生

蹴球放浪家・後藤健生を動かす源は、知的好奇心である。そのフィールドに国境はない。「食」というカテゴリーも、蹴球放浪家のテリトリーであるのだ。

 僕は日本の2戦目、1月13日のタイ戦の日の朝に現地入りしました。浦東空港から地下鉄で上海駅北側にあるバスターミナルに出て、そこからバスで江陰に向かいました。

 僕は他のグループの試合も見たいので、毎日移動しました。日本戦の翌日は崑山まで韓国やオーストラリアの試合を見に行ったのですが、オーストラリアはベトナムに敗れてしまいました。ベトナムはその後も快進撃を続けて決勝に進出。大雪の中で行われた決勝戦で延長の末にウズベキスタンに敗れてしまいましたが、ベトナム全土が熱狂したようです。

 崑山の翌日は、常州に移動して中国とウズベキスタンを見て、翌日また江陰に移って日本の3戦目を見るという忙しい日程です。しかも、江陰には鉄道が通っていませんでしたから、他の都市に行くにはバスに乗って無錫駅まで出なければいけません。無錫、常州、崑山は中国ご自慢の高速鉄道が頻繁に走っているので(しかも、日本の新幹線と違って運賃が安いので)あとの移動はとても楽なのですが……。

 1月14日は崑山南駅(高速鉄道は「南駅」に停まります)に着いて、ホテルに荷物を置いてからすぐに駅前のバス停から市内バスに乗ってスタジアムに向かいました。市の西部にあるスタジアムまではバスで30分ほどかかりました。中心街を通り抜けるので時間がかかるのですが、まあ、バスの車窓から街の見物でもしていれば退屈もしません。

 そのバスの路線図を見ていたら、終着のバス停が陽澄湖のそばらしいことに気が付きました。

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