■川村の左足は世界基準だ
高橋と同じ1999年生まれの選手では、愛媛FCのMF川村拓夢も注目に値する。
彼の武器は左足だ。「ズドン」と音がするようなパワフルな一撃から、「糸を引くような」と言われるようなピンポイントの高速シュートまで、多彩なひと振りでゴールネットを揺らす。ドリブルで持ち出してからでも、クロスを受けてのワンタッチでも、強くて正確なシュートを打つことができるのだ。
4月11日のファジアーノ岡山戦で決めた1点目のシュートは、彼のポテンシャルが分かりやすく発揮されたものだった。シュートレンジの広さと精度の高さは、世界基準に到達していると言っていい。
キック力を生かした展開力もあり、ラストパスの供給役にもなる。同じ左利きで大型選手の伊藤(シュツットガルト)が最終ラインのゲームメーカーなら、川村は攻撃のオーガナイザー兼フィニッシャーである。
ポジションの汎用性も高い。今シーズンの愛媛のシステムでは2トップの後方に立つことが多いが、様々なシステムでプレーできる。180センチとサイズにも恵まれており、ディフェンスの局面でしっかりとバトルできる。
今シーズンのJ2では、1・5列目や2列目の選手として山田大記と大津祐樹(いずれも磐田)、松田天馬(京都)、高木善朗(新潟)、清武功暉と風間宏矢(いずれも琉球)、長谷川・アーリアジャスール(FC町田ゼルビア)、山田康太(モンテディオ山形)、泉澤仁(ヴァンフォーレ甲府)らが、印象的なプレーを見せている。所属クラブがJ1昇格争いを演じている彼らと比較しても、川村は見劣りしていない。
19年にサンフレッチェ広島から期限付き移籍し、J2での戦いは3シーズン目となる。今シーズンはここまで22試合に出場してキャリアハイの7ゴールを記録しており、2ケタ得点も現実的だ。所属元の広島でも十分に機能するレベルにあると言っていいが、愛媛からすれば欠くことのできない選手である。川村が出場しなかった試合は、1勝2分5敗と黒星が大きく先行するのだ。
愛媛をJ2残留に導いたうえで、川村自身は新たな戦いへ踏み出す──ステップアップの機は熟した。