■クイーンズパークFCは3部の名門クラブ

 それまでは現在のラグビーのラックのように密集を作ってドリブルで進むか、前方に向かってボールを蹴り込んで後方から選手が殺到するようなプレーが主だったのだが、パスを使って攻めることができるようになったのだ。選手たちは密集を作るのではなく互いに距離を取ってパスをつないでボールを運べばいいのだ。こうして、「パス・サッカー」が誕生した。

「パス・サッカー」を“発明”したクイーンズパークFCは、1857年創立のグラスゴーの名門クラブで1884年、85年にはイングランドのFAカップで決勝に残ったことがある。スコティッシュFAカップでは10回優勝しているが、最後のタイトルは1893年。その後、他のクラブがプロ化する中で、クイーンズパークFCはプロ化を拒否したので下部リーグに低迷してしまう。2019年にはクイーンズパークFCもついにプロ化を認め、昨シーズンは4部に相当するリーグ2で優勝。今シーズンからリーグ1(3部相当)で戦っている。

 また、クイーンズパークFCはスコットランド最大のスタジアム、ハムデン・パークを所有していることでも有名だ。

 ハムデン・パークは、1960年にかつて「世界のサッカー史上最も面白い試合」と言われたチャンピンズカップ決勝のレアル・マドリード(スペイン)対アイントラハト・フランクフルト(ドイツ)の試合が行われたことで有名だ。レアルが7対3で勝って5連覇を達成した試合だ。同スタジアムでは2002年にもUEFAチャンピオンズリーグ決勝が行われ、再びレアル・マドリードがドイツのクラブ(この時はバイエル・レバークーゼン)を破って優勝を果たした。ジネディーヌ・ジダンが強烈なボレーシュートを突き刺したことで有名な試合だ(2002年の決勝の公式プログラムには、1960年の試合のプログラムの復刻版が付録として付いていた!)。

 そうした代表のホームとしても使われる5万人以上収容の大規模スタジアムで、普段は3部リーグの試合が行われているのだ。

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