■気になる「左サイド」の使い方
もうひとつ、気になるのが、左サイドの使い方だ。
この数年、左サイドの攻撃はバルセロナの大きな武器だった。メッシとジョルディ・アルバのホットラインが確立されていたからだ。
しかしながらメッシが去ったことに加えて、アルバの以前の輝きが失われ始めている。左ウィングのブライスワイトもアルバのオーバーラップを意識しているが、パスの呼吸が合わない。この微妙なズレにより、バルサ得意のパスワークとゴール前の崩しは鳴りを潜めている。
そもそも、メッシとアルバのホットラインが確固たるものになったのは、ネイマールの退団がきっかけだった。2017年夏に契約解除金2億2200万ユーロ(約286億円)でネイマールがパリ・サンジェルマンに移籍した後、当時のエルネスト・バルベルデ監督が3トップから2トップにシステムを切り替え、その代わりにサイドバックのアルバを“偽ウィング化”させるという戦術的な対応策を採った。
クーマン監督は今、決断を迫られている。新たな手法でアルバを生かすのか、あるいは右サイドや中央の攻撃を手厚くするのか。答えは一つではない。ただ、何かしらの手段を講じない限り、バルセロナの根本的な問題はくすぶり続ける。
今季開幕前、クーマン監督は次のように話していた。
「メッシの功績を考えれば、すべてのクレにとって(メッシ退団は)大きな痛みだが、過去に生きるべきではない。選手の移籍というのは、起こり得るものだ。私はモチベーションに満ちている。クレの人たちもそうであってほしい。過去ではなく、現在を生きなければいけない」
メッシを過去だと振り切るのは、簡単ではない。それでも、前に進む必要がある。新生バルサの輪郭が、少しずつ見え始めている。