■大迫と古橋はタイプが異なるが…
東京五輪に共通するふたつ目の課題は1トップだ。
大迫勇也がいるのだから、現時点で1トップはチームの武器のひとつである。
気がかりなのは、彼を使えない場面でのプランBが見当たらないことだ。
東京五輪でも似たような問題にぶつかった。
1トップの有力候補だった上田綺世が直前に負傷し、バックアップメンバーだった林大地が急きょ先発に繰り上げとなった。サガン鳥栖所属だった林は、前線からの献身的な守備と2列目を生かすポストプレーで、予想以上の化学反応を生み出した。
その一方で、得点源とはなり得なかった。林は5試合に出場したが、ノーゴールに終わっている。
今回のメンバーでは、大迫に加えて古橋亨梧がFWで招集されている。彼はセルティックで得点を量産しており、心身共に充実した状態で合流するに違いない。
問題はプレースタイルだ。古橋はポストプレーヤーではない。最前線でボールを収めて2列目を生かすのではなく、自らが周囲に生かされるタイプだ。6月のセルビア戦では4-2-3-1の1トップで先発したが、機能したとは言い難かった。
6月シリーズに招集された浅野拓磨も、DFラインの背後への抜け出しを得意とする。大迫ではなく古橋に近い。
古橋のようなタイプを1トップで使うなら、大迫の出場時とは別の種類のコンビネーションを構築する必要がある。久保建英ら2列目の選手を有効活用する意味では、ゼロトップのような布陣にトライするのもいいだろう。しかし、9月以降はテストマッチがない。ひとまず既存のコンビネーションをベースに戦っていくのが、現実的な対処法となる。
大迫が毎試合ピッチに立つことができたとしても、コンディションを落としたり、相手に封じられたりすることはあるだろう。すでに成立しているコンビネーションを土台として彼抜きでも戦える態勢作りに、いまのうちから着手しておくべきである。
人材豊富な2列目を生かす、具体的には2列目の選手が前を向いてプレーする機会を増やすためには、大迫のようなポストプレーヤーがもうひとり欲しい。
では、適任者は?
森保監督がこれまで招集した選手のなかでは、オナイウ阿道だろうか。ポストプレーだけでなく背後への抜け出しも見せつつ、思い切りのよいフィニッシュで攻撃に勢いをもたらす。
招集経験のない選手にも、可能性を探っていくべきだろう。浦和レッズに逆輸入で加入した190センチの木下康介、シントトロイデン所属の191センチの原大智らは、クラブでのプレーを追跡していきたい選手だ。
森保監督のチームは、ワールドカップで史上最高の成績をターゲットとする。左サイドバックと1トップのバックアップを探しておくことは、最終予選突破はもちろん目標を達成するための前提条件と言えるはずだ。