■レバンドフスキとの共通点はなし
ゲルト・ミュラーの訃報を受けて、多くのメディアが現在のバイエルン・ミュンヘンの点取り屋ロベルト・レバンドフスキとミュラーを比較し、レバンドフスキのコメント等があちこちで引用された。
しかし、ともにバイエルンのストライカーであることを除いて、2人には共通点はない。プレースタイルとして、まったくタイプの違うFWなのである。レバンドフスキはいわゆる万能型のセンターFWであり、自ら持ち込んでの豪快なシュートが売りである。一方のミュラーはまさに「リトルゴール」の王者。前線で収めてタメを作るとか、ドリブルでボールを持ちこむといったプレーはほとんどなく、ただひたすらに得点を決めることに特化したプレーヤーだった。
もちろん、ミュラーだってドリブルもするし、普通のFWの役割も果たしているのだが、あまりに「リトルゴール」の印象が強すぎて、ミュラーがドリブルをした場面など誰も覚えていないというわけである。
ミュラーのゴール特集などを見直してみると、彼が決めたゴールのすべてが「リトルゴール」というわけでは、もちろんない。前線でクロスに対してピンポイントで合わせる得点が多いが、空中で正確にボールをとらえたボレーシュートとか、GKには届かないコースを狙った技巧的なヘディングシュートが目につく。
彼の特徴が「強シュート」ではなく、コースを狙った「技巧的なシュート」なのだということは言えそうである。
だが、それでも、ゲルト・ミュラーというと「リトルゴール」という印象が強い。それは、やはり1970年のメキシコ・ワールドカップや1974年の西ドイツ・ワールドカップでのゴールシーンの記憶が強く残っているからなのだろう。