U-24日本代表の東京オリンピックは8月6日で終わった。3位決定戦のメキシコ戦に1-3と敗れたものの、全6試合を経験したことは、日本サッカーにとってはかり知れない価値がある。久保建英と堂安律を攻撃面の中心に据え、吉田麻也、冨安健洋の両CBに加えて板倉滉、そしてボランチの遠藤航、田中碧といった才能が結集し、史上最強とも言われた五輪代表の戦いを、取材歴50年のサッカージャーナリスト・大住良之と後藤健生はどう見たか――。
―森保一監督の采配は、オリンピック全体を通じて見事でした。
後藤「ひとつ問題を挙げるとしたら、いわゆる戦術オタク的な人には不満が残っただろうね。どの相手にも同じシステムで戦ったから。最初の頃は3バック、4バックを使い分けたいと言っていたけど、結局、今大会ではシステム変更をしなかったわけでしょ。勝っていようが負けていようが、相手がどんな相手でも。
そうした“ゲーム戦術”的な采配といえば、スペイン戦で最後に吉田をトップに上げたくらいじゃないですか?そのへんを、もう少しやってほしかったなという気はする」
大住「だけど、相手の良さを潰すようなサッカーでは勝ち目はなかったと思う」
後藤「もちろん、それを90分間続けるというわけじゃないですよ。ある時間帯に、そういった手を打ってみるとかさ」
大住「どこで使えばよかった?」
後藤「だから、スペインを相手に、相手の良さを潰すサッカーをして、どっかのタイミングで切り替えるとか。そういうことをしないと、やっぱり勝てる相手ではない」
大住「スペインに対する中盤の構成の問題ということね」
後藤「そうそう、スペインの3人のMF相手に日本も3人を当てる。たとえばね。あるいは、ニュージーランド戦なんかスリーバックにできなかったかな。だけど、別に僕がそうしろという意味で言っているわけではなくて、見ている人の中には、そういった不満を持った人もいただろうなって思うわけです。
森保監督自身が、3バックと4バックを使い分けるって、チーム作りのなかで試してきていたでしょ? それでオリンピックチームは途中まで3バックでやっていた。いっぽうでA代表は、ずっと4バックでやって、どっかで切り替えたりしている。そういうようなことを、どこかでできなかったのかなって」
大住「そうだね、やるとしたらスペイン戦だった。準決勝は1発勝負だった。そしたら、たとえば4-3-3という形で、相手の中盤に対抗するというアイデアは考えられたね」
後藤「今回はあくまでオリンピックなんだし、長い目でチームを鍛えるというのも大事。だけど、時には勝負に徹する試合をしても良いかなって」