■”先回りのマネジメント”で課題解消を狙う

 大型補強をしなかったことについては、CBにヨルディ・バイス、CFにピーター・ウタカと、攻守の軸に成り得る外国籍選手がおり、アカデミー出身でプロ3年目の福岡慎平、同2年目の川崎颯太ら、見どころのある若手選手が揃っていたからでもある。チョウ監督は湘南を率いていた当時から、若い選手の育成に意欲的だ。果たして今シーズンの京都では、川崎がアンカーのポジションをがっちりとつかみ、福岡もインサイドハーフの選択肢となっている。

 同じくアカデミー出身のGK若原智哉は、20年シーズンから定位置をつかんでいた。さらに、プロ5年目のCB麻田将吾も主力のケガでチャンスをつかみ、ここまで20試合に起用されている。

 新加入の選手がチームを活性化し、若手選手が戦力の底上げをはかり、経験ある外国籍選手がチームの支えになることで、京都は昇格争いの中心にいる。もちろん、チョウ監督の類まれなリーダーシップは見逃せない。攻守に躍動感溢れるサッカーは、観る者を飽きさせない。52歳の指揮官はエキサイティングなサッカーと結果を、両立させようとしている。

 再開後の課題をあえて探すなら、攻撃の爆発力か。

 リーグ5位タイの35得点を記録しているが、無得点試合が「6」、1点にとどまった試合が「5」ある。ほぼ半分の試合で、複数得点を記録できていないのだ。失点をリーグ最少の「16」に抑えている守備は支えになるが、2点目を取って試合を決める展開を増やしたいところだ。

 7月上旬にはJ3の福島ユナイテッドから、ナイジェリア人FWオリグバッジョ・イスマイラを獲得した。J3で得点ランキング2位の23歳は、即戦力に成り得る。得点力アップに向けて、しっかりと動いているのだ。”先回りのマネジメント”は、さすがチョウ監督である。

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