0-0のまま延長どころかPKまで行くのではないか、という空気が漂うウェンブリースタジアムは、後半が始まって10分が経つとサポーターがある選手を求めて叫び出した。慎重さを見せるサウスゲート監督が、そのステップに進んだのはサポーターが我慢しきれなくなってからしばらく経った69分のことだ。スタジアム中が待ち望んだジャック・グリーリッシュがようやく投入された。
すると75分、グリーリッシュの投入に合わせて右サイドに移っていたラヒーム・スターリングが低い位置からドリブルで切り込むと、ボールはペナルティエリア手前中央で構えるハリー・ケインへ。ドイツの守備陣は中央に圧縮され、ボールがケインからグリーリッシュへ渡ると、対面したのはヨシュア・キミッヒだった。
ここでルーク・ショーが浮いた。
ショーは試合を通じてキミッヒを抑える役目を全うしてきた。グリーリッシュはワンタッチ目でボールを内側に向けたことでキミッヒを釘付けにすることに成功。ボールはようやく自由になったショーに繋がり、ダイレクトで折り返すとスターリングが押し込み、イングランドが先制に成功した。
狙い通りにドイツを塩漬けにして時間を消費し、狙い通りのデザインされた攻撃で、終盤に見事にゴール。これこそ監督采配での勝利だ。