神戸対浦和の「理不尽さこそサッカー」(1)浦和のパスコースを封じた神戸の変則3-5-2の画像
競り合うアンドレス・イニエスタと柴戸海 撮影/原壮史

サッカーの醍醐味を堪能したゲームだった。6月6日の日曜日に神戸ノエビアスタジアムでおこなわれたJリーグYBCルヴァンカップ、プレーオフステージ第1戦は、90分間攻め続けたヴィッセル神戸を、じっと耐えながらチャンスをうかがい続けた浦和レッズが逆転で破って勝利をものにした。すぐ一週間後の6月13日に、第2戦が浦和駒場スタジアムで行われる。どちらもまったく違った戦い方をしてくることになるだろう。どんなドラマが待っているのか――。

■“理不尽”がたっぷりと詰まっていた

「This is football」。

 サッカー監督がよく口にする言葉の一つだ。

 サッカーというのは偶然が支配するスポーツだ。ちょっとした幸運によって得点が生まれたり、どんなに論理的な戦術を駆使して数多くのチャンスを作っても、相手のGKが当たりまくったり、不運があれば決まらない時にはどうしても決まらない。ミスジャッジだって、ありうる。

 従って、内容と結果が乖離することが往々にある。同じフットボールであっても、ラグビーというゲームは番狂わせの起こらないスポーツであるのに対して、サッカーは何が起こるか分からない。その理不尽さを楽しむのがサッカーなのだ。

 JリーグYBCルヴァンカップのプレーオフステージの第1戦。ヴィッセル神戸対浦和レッズの試合は、そういう意味でまさにフットボールそのものだった。

 勝利した浦和を批判するつもりはもちろんない。彼らは、勝利という結果を求めて最善を尽くして戦っただけである。

 だが、ゲームを支配したのは、そして、それを結果に結びつけられなかったのは間違いなく神戸だった。とくに前半は「圧倒的」と形容したいほどの一方的な内容だった。

 それは、数字の上でも明らかだ。

 公式記録によれば、シュート数が神戸の15本に対して浦和が5本。GKは神戸の3に対して浦和は12。CKは神戸の6に対して浦和が1。すべての数字が「神戸の優勢」を示している。

 ところが、浦和は前半のアディショナルタイムに追い付き、そして後半は相手のパスを拾って勝ち越し、勝点3を持ち帰ることに成功したのだった。

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