■マスカット監督が杉本に与えた役割

 逆転の流れを作ったのは、杉本一人だけの力ではない。杉本が入った時点で、システムを変更。4-3-3から4-4-2のダイヤモンドへと布陣を変更したのも功を奏したし、マンマーク気味だった札幌の体力がなくなってきた時点で、アウェイチームの修正が利かなくなってきたことも要因だろう。それでも、杉本の動きは特筆できるほど素晴らしかった。

 杉本は7月23日に浦和レッズからの期限付き移籍でトリコロールのユニフォームをまとうこととなった。浦和ではなかなか真価を発揮できず、今季の浦和では、16試合に出場して2得点。さらにキャスパー・ユンカーの加入もあって出場機会はさらに失われていった中での移籍だった。

 舞台を横浜に移しても、出場機会はここまで十分とは言えず、9試合で249分しかリーグ戦の出場はない。それでも3ゴールを記録。浦和でくすぶっていた気持ちを解放するかのように、得点機会を狙っている。

「前半、なかなか自分たちのサッカーができず、攻められる場面が多かった。出番が来たら“絶対に1点取って逆転してやる”という気持ちで入りました」

 試合後にこう話した杉本だが、気負いすぎることなく、チームにためにプレーした。ケヴィン・マスカット監督が指示した、「僕が下がって相手の中盤センターバックの間でボールを受けながらゴール前に入っていく」動きを確実にこなし、道筋を作った。

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4