■ヘディングの競り合いでの危険性

 ヘディングの危険性のもうひとつの側面は、競り合いでの相手との衝突に代表される脳への衝撃だ。ゴール前に入れられたクロスに対して、ヘディングで得点しようという攻撃側の選手と、クリアしようとする守備側の選手がともに強く頭を振り、激しくぶつかってしまうというようなケースである。これはキックによる大きな運動エネルギーが加わっているとはいえ、重さ400グラム程度で、ヘディングすればへこむボールを頭で打つときと比較するとはるかに危険な状況だ。

 このような状況で脳振とうが起きたときにはプレーを続行させてはならず、その後の練習や試合への復帰も段階的に行わなければならないというガイドラインは、2012年に国際サッカー連盟(FIFA)が定め、日本サッカー協会も2014年から実施している。そしてことし、国際サッカー評議会(IFAB)は、脳振とうが起きた場合の「交代枠の追加」に関する新ルールの試験採用を決め、日本サッカー協会もそのプログラムに参加している。

 サッカーに慣れ親しんだ人であれば、こうした動きは「プレーヤーの安全を守るための進歩」であると考えるかもしれない。しかしあまりサッカーを知らない人なら、「そんなに危険なら、なぜヘディングを禁止しないのか」と思うのが自然だ。だがIFABやFIFA、そして日本サッカー協会からも、そうした話は、まったく聞こえてこない。

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