大住良之の「この世界のコーナーエリアから」連載第61回「サッカーからヘディングがなくなったら」(1) 「新ルール」で変わったハンドの判定の画像
激しいヘッドでのボールの競り合い 撮影/原壮史
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日本代表FWの巻誠一郎は「利き足は頭です」と語った。足元は不器用だったが、腰より下の低いクロスもヘディングでゴールに叩き込み、名将イビチャ・オシムに愛された。同じく岡崎慎司の座右の銘は「一生ダイビングヘッド」。プレミアリーグ優勝を遂げたレスターシティーFCでの入団初得点もダイビングヘッドによるゴールだった。しかし、ヘディングが脳に与えるダメージが医学界からたびたび指摘されるようになっている。サッカー側もこの問題と向き合う覚悟を決めなければならない。ヘディングのないサッカー……。ありえる? ありえない?

■新ルールでハンドの判定が変わる

 6月5日と12日に行われるU-24日本代表の試合、そして10日と13日に行われるなでしこジャパンの試合、計4試合は、正式にはことし7月1日に施行される「2021/22版」のルールで行われる。一方、5月28日のミャンマー戦から6月15日のキルギス戦まで、日本代表の試合はすべて旧ルール、「2020/21版」での試合である。7月下旬から8月上旬にかけての東京オリンピックでは、「新ルール」が使われるためだ。

 北海道から福岡まで、まるで町から町を回る劇団のように取材して回る身としては、「きょうはどっちのルールだっけ?」と、その都度確認しなければならない。なかなか忙しいことである。

 なにしろ、ことしのルール改正では、「ハンド」の反則が大きく変わった。たとえばストップしようとしてボールが跳ね、手に当たったとしよう。そのボールを自分でシュートして決めてしまったら、どちらにしてもハンドの反則だが、自分で打たずにすぐ近くに寄ってきた味方選手に渡し、彼がゴールに叩き込んだときには、「旧ルール」ではハンドの反則だが、「新ルール」では反則にはならず、ゴールが認められることになる。

 そのほか、これまで一律に「肩より上に上げられていた手にボールが当たったら反則」とされていたものが、その手あるいは腕が体の自然の動きの結果上がっていたものなら反則には取らないことになった。「裁量権」の範囲を大幅に拡大された主審は大変だ。

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