■一度は追いついた鹿島だったが

 だが、これだけ圧倒的に攻めながら、得点が1点に留まったところは後半に向けての懸念材料だった。しかも、1ゴールに終わったのはたまたまシュートが外れたからではなく、鹿島が押しこまれながらもしっかり守り切ったという印象が強かった。

 鹿島も試合前から気持ちが入っていた。

 試合前にフィールドプレーヤーたちがピッチに入ってウォーミングアップを始めると、コーチ陣が周囲で大声をかけて気持ちを高め、その後のボール回しやシュート練習などでも最後までインテンシティの高い動きを続けた。相馬直樹監督の方針なのだろうが、首位川崎との試合ということで余計に気合が入っているように見えた。

 実際、前半の戦いでは川崎の激しい攻撃の前に押しこまれ続けたものの、鹿島もその強い気持を45分間保ち続け、DF陣が耐えて川崎の得点を1点で抑えることに成功したのだ。

 そして、後半に入ると試合の流れは大きく変わった。

 53分にレアンドロ・ダミアンのパスで三笘がフリーとなってドリブルでペナルティーエリアまで進入されたが、鹿島DFの町田がカバーして防ぐ。すると、59分には鹿島に決定機が生まれた。右サイドに顔を出した上田のパスから土居がつなぎ、上田が抜け出してGKと1対1の場面を迎えたのだが、これは川崎のGKチョン・ソンリョンがブロック。

 こうして、試合は両チームが激しく攻め合う展開となった。

 そして、61分には後半からピッチに入った白崎凌兵が縦に入れたパスを荒木がつなぎ、走り込んだ上田がワンタッチのシュートを決めて鹿島が同点に追い付いた。

 その後は鹿島がペースを握る時間帯、川崎が押しこむ時間帯が交互に繰り返され、そのまま同点で終了かと思われたが、アディショナルタイムの90+4分に長谷川竜也のクロスを1分前に交代でピッチに入ったばかりの小林悠が決めるという劇的なゴールで川崎が土壇場で勝ち越しを決めたのだった(ただし、VARチェックで判定が確定するのに時間がかかったが……)。

 苦しい展開の試合でもゴールをこじ開けて勝点3を獲得するあたりが、「さすが川崎」というところである。

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