■チームの未来も照らす生え抜き選手たち

 両チームとも、率いる指揮官は最高クラス。その対戦には、もうひとつ興味深い類似点がある。

 両クラブとも潤沢な資金を背景に、世界中からまぶしいばかりのタレントを集めている。だがその中で、また違う輝きを放つ「金の卵」がいる。ともに自前のアカデミーで育った選手たちである。

 メイソン・マウントは、6歳からチェルシーのアカデミーで育った、生え抜き中の生え抜きだ。

 現体制では2シャドーの位置に入るが、ピッチのあらゆる場所に顔を出す。ただ走り回るだけではなく、周囲のためにスペースをつくり出し、また自らスペースを見つけて飛び込んでいく。その移動範囲にはもちろんゴール前も含まれていて、仲間にラストパスを通し、さらには自らフィニッシュに持ち込む。

 プロデビューを果たしたフィテッセ(オランダ)に続いてローン移籍したダービー・カウンティでは、監督として歩み始めたチェルシーのレジェンド、フランク・ランパードの下でプレーした。2019-20シーズンにはランパードとともにチェルシーに戻り、いきなり主力に。周囲からはランパードの贔屓だとも揶揄されたが、今季途中にランパードの後を継いだトーマス・トゥヘル監督にも重宝されて激賞を受けたことで、そうした声も封じた。今季のクラブの年間MVPとなった期待の星である。

 マンチェスター・シティにも生え抜きがいる。CL決勝の前日、5月28日に21歳になったばかりのフィル・フォデンである。

 本来はセントラルMFだが、今ではウィンガーとしてシティの左サイドで猛威を振るっている。ただし働き場所を動かしても、そのクオリティに乱れはない。ベースとなるのは、そのボールタッチだ。

 精緻なトラップでピタリとボールを止め、スムーズに次の動きへと流れていく。そのタッチのフィーリングはパス、あるいはシュートにも活かされ、今季の国内リーグでは9得点5アシストを記録。CLでも3ゴールを挙げているが、そもそもこの若さでシティで主力としてプレーしている事実自体が普通うではない。

 この2人は、間違いなく両チームの大事な選手であり、試合の行方を変え得る存在だ。チェルシーには、やはりアカデミー育ちの20歳、カラム・ハドソン=オドイもいる。ベンチスタートとなりそうだが、ウィングバックでもシャドーでも起用可能なアタッカーで、18歳でイングランド代表デビューを飾った逸材だ。今季プレミアリーグでも交代出場から2得点と、タイトルを引き寄せる鍵になる可能性は十分にある。

 あらゆる瞬間、あらゆる観点から、目を離せない一戦となりそうだ。

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