■シティが採用した驚きのシステム

 シティの今季の1試合あたりの平均パス数は675本。この試合ではその平均値よりもかなり少なく、相手のチェルシーをも下回る537本のパスにとどまったが、前半から前に出る姿勢を示していた。左CBのネイサン・アケを左に開かせ、ウィングバックのバンジャマン・メンディを高く押し出す。先に惜しいシュートを放ったのも、シティだった。

 本数は少ない分、シティは長短のパスを効果的に使っていた。それが実ったのが44分。自陣からのロングパスに走り込んだガブリエル・ジェズスがDFとラッキーな形で入れ替わることに成功。ボックス内からのクロスを、最後はラヒーム・スターリングが押し込み先制した。

 対するトーマス・トゥヘルも、3日前のレアル・マドリード戦から、先発5人を変えてきた。ただし、シティほどに大胆ではなく、3-4-2-1のフォーメーションは崩さなかった。

 むしろ、1トップに入ったティモ・ヴェルナーは、トゥヘルの親心と受け止めていたかもしれない。巨額の移籍金で招かれたプレミアリーグ初年度で、ゴールから見放される時間が長かった。CL決勝に向けても良い流れをつくり出そうとするかのように、快足を飛ばして攻撃の急先鋒となるシーンを披露していた。オフサイドではあったものの、1度はゴールネットを揺らしている。

 トゥヘルには、うれしい悩みが増えたかもしれない。セサル・アスピリクエタの起用法である。レアル・マドリード戦では右ウィングバックに入っていたが、この試合ではトゥヘルの初陣同様に3バックの右で先発した。その監督交代で右サイドバックからCBに入った頃のように、ボール奪取、攻撃参加と存在感を示す。同点ゴールの引き金を引いたのも、このスペイン代表DFだった。ハーフウェイライン付近でハキム・ジエシュが追っていたロドリゴから、かっさらうようにボールを奪って起点となる。その一連のプレーを締めたのも、アスピリクエタ。ボックス付近にいる4人の中から、最もDFの付きが甘いジエシュを冷静に発見。パスを通して同点ゴールを導いた。

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