どうやら横浜FMの完全復活の姿が見えてきたようだ。2019年の終盤、マリノスは無類の強さを発揮して、優勝への一本道を走りぬいた。2連覇中だった川崎フロンターレには勝ち点10差をつけての見事な戴冠だった。しかし、そのサッカーは他チームに研究し尽され、昨シーズンの異例な過密日程はハードワークを前提としたサッカーを9位に埋もれさせた。そして2021年、階段を一歩ずつ上がってきたマリノスは、FC東京に完勝して、ついに優勝争いに名乗りを上げた——。
■前田大然のポジションをめぐる論争
今シーズンの開幕直後、外国人アタッカー不在で不安を抱えていた時期にゴールを決めて横浜FMを支えたのが前田大然だった。従来は、サイドアタッカーとして活躍してきた前田は第2節のサンフレッチェ広島戦で2ゴールを決めて、いきなり相手に2点を先行された難しい試合を引き分けに持ち込むための原動力となり、その後はトップでも起用されるようになった前田は「4試合連続」を含めてこれまでに8得点を決めている。
そして、最近になって得点感覚に目覚めた(?)オナイウ阿道も得点を重ね、FC東京戦でのハットトリックで得点数は8点に達し、ついに前田に追い付いた。
今シーズン、苦しい時期に得点を重ねてチームに貢献した前田だが、彼のワントップでの起用については賛否両論がある。
「彼は、やはりサイドで相手をかき回す仕事をすべき」という論者もいれば、「いや、彼の得点力を生かすためにはこれからも中央で起用すべき」という人もいる。
もちろん、どちらが正解と言い切れるものではないが、僕は前田はトップに張っているタイプではなく、もし中央を任せられるだけの選手がいるのであれば、サイドから崩して中に切れ込んでフィニッシュに絡むべきではないかと思っている。
一昨年の優勝時には、右サイドにいた仲川輝人が中に切れ込む形で15ゴールを決め、マルコス・ジュニオールと得点王を分け合った。そんなイメージである。
オナイウ阿道が得点感覚に目覚めたことの最大の意味は実はここにある。
オナイウは中央に張ってゴールを決める仕事に特化した選手となっていくだろう。そうなると、前田を迷いなくサイドアタッカーとして起用することができるのだ。しかも、右サイドで起用されるエウベルがチームに完全に溶け込んで再三サイドからの崩しでチャンスを作ることができているのだ。得点を取ることに特化したセンター(オナイウ)と、得点力のあるサイドアタッカー(前田とエウベル)が並び、その下の位置でマルコス・ジュニオールが攻撃を操り、さらに自身でもゴールを狙えるようになれば、横浜FMの破壊力はJ1屈指のものとなるはずである。