■マリノスの代名詞は「サイドバックの攻撃参加」

 両サイドに優れたアタッカーを配置することには、横浜FMにとっては他にも大きな意味がある。それは、サイドバックの攻撃力を生かすためである。

 2019年シーズンにポステコグルー監督が就任して、そこで超攻撃的なサッカーを披露したのだが、その最大の特徴の一つが両サイドバックがインサイドハーフのポジションに上がって攻撃の起点となることだった。右の松原健や左のティーラトンが攻撃を組み立て、あるいはフィニッシュに絡むパスを出す。そして、時にはゴール前まで進出して自らシュートを狙う……。

 その神出鬼没のプレーに相手チームは戸惑い、非常に大きな効果を発揮した。

 2020年の2月に横浜FMはAFCチャンピオンズリーグ(ACL)で全北現代モータース(韓国)、シドニーFC(オーストラリア)と対戦した。新型コロナウイルス感染症の影響でグループステージの試合が延期になる直前のことである。アウェーで対戦した全北戦は得点こそ2対1だったが内容的には横浜FMの完勝。そして、ホームのシドニー戦は4対0というスコアで、シドニーは横浜FMの変幻自在のシステム変更にまったくついていけず、横浜FMの一方的な勝利だった。

 ところが、2020年のJ1リーグでは両サイドバックの攻撃参加も前年度のように効果的でないばかりか、サイドバックが上がった裏のスペースを狙われることも多くなってしまった。ここがJリーグというリーグの難しいところで、Jリーグのクラブは相手チームのストロングポイントを分析研究して、相手の良さを消すことがうまい。

 こうして、横浜FMは両サイドバックの攻撃参加という最大のストロングポイントを発揮することができず、2020年の間はやや迷走状態に陥った。そして、2021年のシーズンに入ると、両サイドバックはより自重しながら、効果的なタイミングを見計らって攻撃に参加することによって好守のバランスを取ろうとしているように見えた。

 その意味で、両サイドに強力なアタッカーが配置できれば、サイドバックの生かし方もバリエーションを増やすことができるのではないだろうか。
 

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