大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第56回「『代表チーム』と同宿」(2)カンボジア代表に「負けた!」と思った日の画像
2011年、タジキスタン代表と同宿になったドゥシャンベのイスティクロル・ホテル。タジキスタン代表の中核をなす「イスティクロル・ドゥシャンベ」クラブと関係があるらしい。(c)Y.Osumi
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日本代表は手の届かないところに行ってしまって、報道陣は同じホテルに泊まることもできない。しかし、まだまだ敷居の低い代表チームもある。今回は、外国の代表チームと同じホテルに泊まったエピソードの数々を――。

■ 2011年タジキスタン代表とスタジアムのある公園で

 飛行機で同行といえば、2015年の秋、日本代表がオマーンのマスカットでシリアとワールドカップ予選を戦った後、テヘランに回ってイランと親善試合をこなした。このとき、別の組だったイランも、日本がシリアと対戦した日に同じマスカットでオマーンと戦い、テヘランに戻って日本との対戦という形だった。マスカットは中東の交通網のなかではやや「はずれ」にあり、テヘランへの直行便はない。私はUAEのドバイ経由でテヘランに向かったのだが、ドバイからテヘランへのエミレーツ航空でイラン代表と同便になったのだ。

 隣に座ったブリア・バフリというDFの選手がきれいな英語を話したので、1時間あまりのフライトはあっという間だった。着陸してから、私は通路をはさんで隣にいたもうひとりの選手にカメラを渡し、バフリと2人を撮ってくれと頼んだ。ヒゲづらが多いイラン代表のなかでとりわけ若く、つるつるした顔の選手は、「いいよ」と言って私のカメラを取ると、なんと、まず左手を伸ばして「自撮り」した。「えっ?」と驚くと、彼は笑ってバフリと私を撮ってくれた。その選手は、この予選でもすでに得点を記録していた次世代のエース、サルダル・アズムンだった。

 2011年11月にワールドカップ予選でタジキスタンと対戦したときには、タジキスタン代表と同宿になった。旅行の計画をたてながらスタジアムに近いホテルを探すと、徒歩わずか5分というホテルが見つかった。試合の行われるセントラル・スタジアムのあるスポーツ公園の端にあるホテルで、チェックインしたらタジキスタン代表がいた。どうやら代表チームの定宿らしい。だが選手も協会の役員たちも日本のメディアだとわかっても気にすることはなく、リラックスして過ごしていた。

 11月のドゥシャンベは、晩秋の色が濃い。試合の2日前に私が到着した日は大雪で、スタジアムに行くとたくさんの人が除雪作業をしていたが、すべて人力でどうなることかと思ったが、翌日にはきれいに晴れて気温も上がり、20センチもあった積雪はあっという間に融けていた。日本チームの練習取材が終わった後に町の中心に出て市内散歩し、歩いて帰ってくると、散歩にでも出かけたのか、タジキスタンの選手たちが連れだってホテルに帰るところだった。

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