■「2つの怪物が我々の背後にはいる」
今季、アトレティコは【3-1-4-2】のシステムを使用してきた。従来の【4-4-2】を放棄して、3バックで戦ってきた。
その中でマリオ・エルモソ、トーマス・レマル、ジョレンテが躍動した。アトレティコは、彼らを獲得するために、決して安くない移籍金を支払っている。エルモソ(移籍金2500万ユーロ/約32億円)、ジョレンテ(移籍金4000万ユーロ/約51億円)、レマル(移籍金7200万ユーロ/約85億円)。そういった選手たちがフィットしてきたことには、大きな意味があると言える。
しかしながら、課題はある。マドリーとのダービーマッチ、チャンピオンズリーグ決勝トーナメント1回戦のチェルシー戦で、シメオネ監督は【3-1-4-2】と【4-4-2】を使った。「併用した」といえば、聞こえはいい。だが指揮官は明らかに悩んでいた。守備的に戦うか、攻撃的に戦うか。ボールを握るのか、ボールを譲るのか。方向性が定まらず、チームは浮遊しながら欧州最高峰の舞台から姿を消した。
シメオネという監督は、勝負師である。ゆえに、勝利の可能性がチラついた時に、彼は欲を見せる。チェルシー戦では、トーマス・トゥヘル監督が就任したばかりのイングランドの雄を相手に、得意の【4-4-2】でソリッドに戦えば勝てるのではないかという欲望に駆られていたようにみえた。
「我々はリーガの首位を走ってきた。だが、2つの怪物が我々の背後にいる。マドリーとバルセロナは、これから先1試合も負けないだろう。しかしながら不安を感じてはいけない自分たちの道を進まないといけない」
「今季のラ・リーガはマドリーとバルセロナが不安定な中で始まった。マドリーとバルセロナは力を取り戻し、一方で我々はシーズン序盤戦の彼らのように不安定になっている。すべてのチームに、そういう時期がある。アトレティコにとってのその時期が過ぎ去ったと願いたい」
「私は嘘つきではない。試合から試合へ。それは変えないよ。何より、私はこういった状況が大好きなんだ」
これはシメオネ監督の言葉だ。
アトレティコvs2つの怪物ーー。今季のラ・リーガの構図は定まった。アトレティコが優勝した2013-14シーズン、そして直近のマドリーが優勝した2019-20シーズン、ラ・リーガを制したのは最後のスプリントを決めたチームだった。
余力が残っているかは分からない。それでも、彼らは走り切らなければいけない。その先の栄光を信じて。