■まるで生き物のような福岡のサッカー
この試合をそうした緊張感あふれるものにした最大の要因は、衰えるということを知らなかった福岡の旺盛な闘志と、長谷部監督が昨年から鍛え上げ、ことしさらに積み上げてきている「組織力」だった。川崎の攻撃に耐えながら最後までチームがひとつの意志をもった生き物のように機能し、攻守を繰り返していた福岡を、心から称賛したいと思う。
そしてまた、そうした福岡の「力」を素直に認めた鬼木監督と川崎の選手たちが、この試合の状況を非常に真摯に受け止め、危険なものと感じ、耐えるところは耐える、耐えながら、相手にとどめを刺す一撃をどんな瞬間にも狙っていくというプレーは、非常に見応えがあった。
前半、あれほど「主役」を演じてしまった家本主審は、後半、まったく私の意識の外になってしまっていた。それは、家本主審にとって喜ぶべきことに違いない。
「4連戦」という厳しい状況、そしてハーフタイムが35分間にもなるというアクシデントにもかかわらず、両チームとも、チームとしてやろうとしているサッカーを明確に表現しきった試合。冷たい雨と風のなか思いがけなく長くなった観戦で、体は冷えきってしまっていたが、これほど見応えのある試合は滅多にあるものではないと、帰途、私は幸福感に満たされていた。