■左右で違うコンセプト
そして、この3点目にこそ川崎の強さが表れている。アダイウトンが入って以降、FC東京は左から攻めようとした。ブラジル人ストライカーの速さと力強さで、徐々に左サイドで押し込み、家長昭博に守備をさせることでその攻撃力を削ぐことに成功した。
しかし、である。川崎の3点目はその逆サイドである右サイドで奪ってみせた。起点は、東京から見て左サイド。山根視来から出た長いサイドチェンジだ。それを、右サイドバックの中村拓海がトラップして奪ったかに見えたが、その瞬間、三笘薫が即座に奪って得点としたのだ。
川崎も4-3-3を用いるが、右と左では攻撃の形が違う。右の家長と、左の三笘。2人は、利き足も異なるが、プレースタイルも違う。家長の、創造性と高度な戦術眼を生かした攻撃が右ならば、分かっていても止められないドリブルが三笘。対戦相手が、どちらかを封じても、どちらかは猛威を振るう。しかも、2人がポジションチェンジをすれば、対峙する守備者としては“目線”が狂わされる。
東京は、先述したように速さと力強さを左右でも中盤でも用いる。ともすれば、単調になる可能性もあるが、永井謙佑やレアンドロ、アダイウトンや田川亨介といったタレントの力と、中央にいる絶対的なディエゴ・オリヴェイラのマンクオリティでねじ伏せる。