■溶けていった時間

 0-0の終盤に久保を投入するということは、ホセ・ボルダラス監督からの、攻撃に出るぞ、というメッセージのはずだった。

 しかし、久保の10分間はあっという間に過ぎていってしまった。

 攻撃への関与は、左サイドからのクロスに飛び込もうとしたことが1度あっただけだった。

 1点を奪うよりも0点で終わることを強く意識した選手たちは、4-4-2の形で守っていたはずが自然と最終ラインに8人が並ぶ形になってしまい、ロングボールを蹴る、という選択肢しか持たなくなってしまった。

 久保はこぼれ球を狙うしかなく、ボールは回ってこなかった。

 そして、試合はそのまま終わりを迎えた。ボールタッチは衝撃的な0回。チャンスを活かすかどうか、という話にすらならない展開で終わってしまったことは、久保にとって不運以外の何ものでもない。良い方向に進みかけていた流れを強制的に止められてしまったも同然の試合になってしまった。

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