3月25日に行われる日本対韓国の親善試合。日本にとって特別な思い入れのある韓国との一戦は、多くの注目と期待を集めている。サッカージャーナリストの大住良之氏と後藤健生氏の2人が、実に54年間にわたる日韓戦観戦の蓄積から、多彩な角度の議論を戦わせる!
■「スタジアムが赤と青に染まった」
―後藤さんは試合をご覧になっていて、不思議だと思いましたか?
後藤「あれは勝っても嬉しくもなんともなかった」
大住「そう。不思議な感じだったよね」
後藤「あの試合は、日本から大勢の日本人が行って、オリンピックスタジアムが赤と青に分けられた。それを見て、これはすごいなと思ったんだけど、試合内容は、ただ勝っただけだった」
大住「日本からは8000人が行ったんだけど、日本人はここ、って言って北側のゴール裏に全員集めちゃったんだよね。そのおかげで、日本にとって空気がものすごく良くなった」
後藤「アウェイの試合で、あれだけ多くの人が行ったのも初めての事だったから。画期的だったね」
―日本人サポーターをゴール裏に集めたのは、誰の差配だったのですか?
大住「日本の旅行会社。予選が始まる前から、誰もがが11月、ソウルでの日韓決戦をキモだと思っていたわけ。出場が決まる試合だと考えていたから、ものすごく気合いを入れて、たくさんの会社が企画してチケットを買ったんだよね。それをある旅行会社が、全ての旅行会社を集めて、バラバラにやっていちゃいけない、サポーターが危ないよって。
逆のことがあるわけだからね、日本が勝って韓国のワールドカップを阻止する可能性もあったわけだから。そういう時にちゃんとセキュリティができるように、日本のサポーターを集めておこうって」
―素晴らしい判断ですね。結果として、韓国に不思議な感じで勝っちゃったわけですが、その時の韓国のサポーターはどんな雰囲気でしたか?
大住「その時の韓国のサポーターは、日本が勝ってよかったね、みたいな感じだった。殺気とかは全然なかったよ」
後藤「それが僕は許せなかったんだよな。ちくしょう、って思ったね。当時の韓国には、日本人選手のファンがたくさんいるんだよね。試合前日の練習の時なんか韓国のサポーターが、横断幕を持って、カズ(三浦知良)を待ち受けていたりさ」
大住「バスも大変だったよね?」
後藤「そうそう、ミーハーがたくさんいた。そうなると張り合いがなくなっちゃうよね。試合では韓国を応援するけど、カズさんが好きなんです、みたいな」