■止まらないJリーグ通算ゴール記録

 川崎戦では85分に交代したが、90分は楽にできるのではないかと思えるほど、大久保の動きは落ちなかった。38歳という年齢、過去3シーズンで合計5得点しかできていないなどのデータだけで、大久保を「過去の人」のように思っていたことを、私は恥じた。大久保のプレーにも情熱にも、「限界」を感じさせるものなどまったくなく、むしろ、総合的に見れば30歳前後に川崎でプレーしていたころ以上のパフォーマンスを見せていることは、本当に驚きであり、同時にJリーグにとっても、このうえない宝物のように思うのだ。

「185」で止まりかけていた「YOSHI METER」(川崎のサポーターがつくったJ1での大久保の通算ゴール数を示すバナー)は、2021シーズンの開幕からわずか数日で「188」に伸びた。川崎のサポーターは、対戦相手のエースとして等々力に迎えた3月3日の試合にもこのバナーを掲出し、その数字を積み重ねた。そして以後は、C大阪のサポーターに引き継がれるという。素晴らしい話だ。

 シーズン残り試合は36。J1通算200得点まであと12点。メディアは早くもその可能性を書き始めている。だが私は、「200どころでは止まらない」と思う。若さあふれる現在のプレーから見れば、大きなけがさえしなければ、230でも250でも可能ではないかとさえ思えるのだ。大久保嘉人は、まさに「春真っ盛り」なのである。

 これから「世界」に飛びだそうという三笘や田中碧(ともに川崎)といった、若い才能には強く惹かれる。しかし大久保は彼らに負けないJリーグの宝だ。その宝の輝きを、まだまだ楽しめると思うと、うれしくて仕方がない。

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4