怪物が目覚めた。史上初の3年連続Jリーグ得点王(2013−15年)を記録した不世出のストライカーが、そのゴールを渇望する心に火を付けた。J1リーグのすべてのクラブのGK、DF、そして監督とサポーターは、震えて待たなければならない。
■大久保のもっとも優れた資質
大久保嘉人のストライカーとしての才能に疑念はない。身長170センチと小柄ながら、強靱な足腰をもっており、当たりにも強い。そして何よりも、最高クラスのシュート技術をもっている。右足のシュートが主体だが、左足でも、ヘディングでも決めることができる。クロスに合わせるヘディング、低いクロスに飛び込むスライディングシュート、味方シュートのリバウンドへの反応の速さ……。
川崎戦での2ゴールでも示したように、大久保はシュートに余計な力がはいらず、常にリラックスしたフォームでプレーできる希有な選手だ。練習場でGKのいないゴールにボールをけってみろといったら、プロならどこからでも決められる。しかしGKがはいると、ゴールから20メートルのシュートでも枠を外す。そして試合でペナルティーエリア内でボールを受けたときには、「シュート!」と思った瞬間に体はガチガチとなり、タイミングは遅れ、ブロックされたり、GKに読まれてしまう。
ところが大久保は、どんな瞬間にもリラックスしてプレーができる。30メートルからのシュートだろうと、ペナルティーエリア内だろうと、相手DFに厳しく体を寄せられていようと、また全速力でドリブルしていようと、まったく余計な力がはいらず、まるで練習でボールをけっているときのようにリラックスしてボールをけることができるのだ。これこそ、大久保がもつ最も優れた資質といえる。だから、どんな状況でも正確無比なシュートを打てるのだ。その能力は、3年連続得点王になったころからまったく落ちていない。