■いい大久保とわるい嘉人
もうひとつ、大久保がまったく変わらないのが、サッカーへの情熱だ。
若いころの大久保は、情熱のあまりラフプレーになったり、相手に報復するなどの行為もあった。J1でイエローカード103枚(通算最多)、レッドカード12枚(ストイコビッチの13枚に次ぎ2位)。「札付きのワル」と言っていい。2003年の東アジア選手権、韓国戦では、前半15分にラフプレーでイエローカードを受け、そのわずか3分後にこんどは「シミュレーション」で2枚目となって退場処分となってしまった。残りの72分間を、日本代表は10人で戦わなければならなくなった。
だがいま、大久保の情熱は「チームが勝つこと」だけに集中している。そのためにピッチに立ち、そのためにシュートを打とうとしているのだ。その姿は、まるで少年のようだ。川崎戦の前半に、中盤で川崎のDFの足からはねたボールがその手に当たったことがあった。もちろん佐藤隆治主審は「ノーファウル」としたが、大久保はプレーが止まった後、佐藤主審に「なんでハンドじゃないんだ」と食い下がった。もしかしたら、最新のルールを知らなかったのかもしれない。その大久保に、佐藤主審がていねいに説明していたのも、どこかほほ笑ましかった。
前半の終盤には、C大阪のGKからのボールを大久保と競り合った川崎MFジョアン・シミッチのひじが大久保の腰あたりにはいり、大久保が倒れるといったシーンがあった。そのときの大久保の大声、「イッタ〜イ!」という叫びも、まるで少年のようで、笑えた。