■適材適所だった清水
攻めも狙いが徹底されていた。攻めに出るサイドバックの裏のスペースを活用し、最終ラインの幅を広げる。35分には、高い位置でボールを奪い、左からカルリーニョス・ジュニオがクロス。エリア内に走り込んでいたのは、右サイドハーフの中山克広。相手サイドバックの裏を取ったが、惜しくもシュートはミートしなかった。
このパターンは、後半に実ることとなる。攻守に実直なプレーを続けながらもCKから先制を許した3分後、78分のことだ。左サイドからのクロスを受けたのは、中山。シュートはまたもミートしなかったが、こぼれ球をチアゴ・サンタナが決めた。
この場面のみならず、清水は適材適所の役割分担が効いていた。カルリーニョスはスピードがないが、キープ力を活かしてボールを動かせる。この場面では、中央でのキープで相手選手を引きつけていた。
そして、ゴールが決まる1分前に投入されていた河井陽介。インサイドハーフに置かれたが、河井はこれまでのキャリアでサイドバックも経験している。カルリーニョスのキープの間に、守備の目を避けて左サイドへ働き場所を移す。そうして受けたボールを、ゴールにつながるクロスに変えたのだ。
83分には、別の交代選手が輝いた。63分に交代出場していた後藤優介だ。今度はカルリーニョスが左サイドから送ったクロスに、ゴール前へと飛び込む。清水と違い統制が取れていない最終ラインの間に飛び込み、逆転ゴールを突きさした。
焦る鹿島はCKで守備をする際に、一気に3人を投入。そのセットプレーで突き放される姿は、綿密なプレーを続けていた清水と、実に対照的だった。
1試合ですべてが変わるわけではない。だが、一度はJ2にも落ちた清水が常勝軍団相手に挙げた開幕戦の勝利の意味は、決して小さくない。