■「女性問題」発言よりも悪質な無責任発言が

 東京オリンピック・パラリンピック競技大会(以下「東京大会」)の開催については、そうでなくても反対論が高まっていた。

 たとえば、緊急事態宣言発出直後の2021年1月9日、10日に共同通信社が行った調査では「中止するべきだ」が35.3%、「再延期するべきだ」が44.8%と、2021年夏に予定通り開催すべきでないという意見が80%を超えている。ちなみに、2024年夏季オリンピック開催国のフランスでも開催反対が6割に達したと報じられている(2022年冬季大会開催国の中国には「世論」などというものは存在しないが……)。

 そんな中で、森会長の女性問題に関する失言で、世論の東京大会に対する反発はさらに拡大するのではないだろうか。森会長によるオウンゴールということなのだろうか。

 客観的に考えても、現在の状況で東京大会が予定通りに開催できるとは到底思えない。

 オリンピックの開幕まで5か月強、パラリンピック開幕まででも200日を切っているのだ。もちろん、季節が進んで気温や湿度が上がれば新型コロナウイルス感染症の拡大は峠を越えることだろう。実際、緊急事態宣言の効果が出始めて感染者数はこの10日ほど減り続けており、重症者数も減少に転じている。

 今後、半年間でさらに感染は収束に向かう可能性も大きい。だが、逆に感染の再拡大の可能性もゼロではない。変異株の出現やワクチン接種の進捗度合い、ワクチンの効果や副反応等々、あまりにも不確定要素が多すぎて、2021年7月の状況を確実に予測することは誰にもできない状況なのである。

 そんな状況の中で、森会長は2月2日の自民党の会合で「新型コロナウイルスがどんな形になろうと、(東京大会は)必ずやる」と発言したのだ。

 単なるリップサービス的な失言である「女性問題」発言よりも、こちらの方がよほど悪質だ。「どんな形になろうと、必ずやる」とは、責任者としてあまりに無責任すぎる。

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