かつて、ノースウエスト航空というアメリカの航空会社があった。成田空港を一大拠点としていて、使い勝手のいい飛行機だった。2010年にデルタ航空と合併して、ノースウエストの名はなくなった。今回は、その懐かしの航空会社から始まったご難のおはなし――。
■バスが蛇行をしているようだ
今年の正月早々、東京でタクシーの運転手が運転中に意識を失ったため、タクシーが横断歩道に突っ込んで歩行者が死亡するという痛ましい事故が起こりました。乗客だったという女性も、さぞ怖かったことでしょう。
僕もそれと同じような状況に陥ったことがあるんです。
2002年、日本と韓国でワールドカップが開催された年のことです。9月には韓国の釜山(プサン)でアジア大会が開かれました。僕も日本代表の初戦(パレスチナ戦)の前日に、成田空港から釜山に向かうつもりでした。
利用するのはアメリカのノースウエスト航空です。
アメリカの航空会社は成田をいわゆる“ハブ空港”としており、アジア各国からの便が成田に到着。そこから、アメリカ本土の各地に向けた便が出発します。アジアとアメリカ各地を往復する乗客は成田で乗り換えてそれぞれの目的地に向かうのです。
そして、アジアの各都市と成田の間を結ぶ便が安い価格で売られていたのです。LCCが誕生する前は、アジアの各地に行く時にはアメリカ系の航空会社の便が一番安い便でした。
成田空港で搭乗を待っていると、ノースウエストの係員がやって来て、こう言い放ちました。
「機材の故障のため、今夜の釜山便は欠航します」
で、釜山便の乗客はソウル便で韓国に入り、ソウルから釜山まで無料のバスで移動するのだという(もちろん、お詫びとしてマイルが加算される)。
まあ、仕方ないことでしょう。故障したまま無理に飛んで途中で落っこちるよりはずっとマシです。