ソウルの運転手は釜山の地理を知らないようで、考え込んでいます。僕は、前年の12月にも釜山に来ていますから(日韓ワールドカップの組分け抽選会の解説の仕事でした)、大体の土地勘はあります。運転手と額を突き合わせて「今、この道から来たんだから、このトンネルを抜けるとここに出るから……」と話し合っていました。

 すると、乗客の一人のアメリカ人のおばさんが顔を出してきました。なんでも、在韓米軍関係者の奥さんで釜山に住んでいるとか、住んでいたことがあるとかで、「地理は分かる」というのです。
 これはありがたい。おばさんにナビを任せることにしました。

 ところが、このアメリカ人のおばさん、韓国語がまったくできないんです。もちろん、「技士さま」も英語は話せません。こうして、僕はおばさんの指示を通訳しなければならなくなったのです。そもそも、韓国の地名のローマ字表記を英語風に読むと、元の韓国語とは似ても似つかない発音になってしまいます。

 たとえば、「釜山」のローマ字表記は「BUSAN」ですから「プサン」が「ブサン」になってしまいます。

 それを、いちいち本当の韓国語の発音に直しながら通訳するというのは至難の業です。

 まあ、とにかく朝の7時前にはなんとか釜山に到着。ほとんど寝ることもできませんでしたが、生命の危機は脱出したというわけです。

 バスを降りてから、最後尾の席に座っていたナース三人組(日本代表のサポーターです)に聞いたら、彼女たちは何も知らずにずっと熟睡していたそうです。

 さて、これから釜山での生活が始まるのですが、僕は釜山滞在中にある計画をしてました。その話は、また次回に……。

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