僕たちは深夜にソウルに到着しました。すぐにバスがやって来て釜山に向かいます。乗客のほとんどは日本人とアメリカ人でした。
僕は、バスではたいてい最前列の席に座ります。この時も、やはり最前列に座っていました。トロトロと眠りに落ちて、バスは南に向かって順調に走行して……いるとばかり思っていたのですが、ふと目が覚めると「何かおかしい」ということに気づきました。
高速道路上で、バスが蛇行しているのです。左側の(韓国は右側交通)中央分離帯のガードレールにガリガリとこすっています。
大変です。どうやら、運転手が居眠りを始めたようです。
「ギサニム、ケンチャナヨ?」
まず、運転手に声を掛けました。直訳すると「技士さま、大丈夫ですか?」です。
韓国では運転手のことを「運転技士」と言います。「運ちゃん」なんて気安く呼んではいけません。