■130年以上の昔にもロングスローのブームが
現行のサッカー・ルールではスローインではボールの投げ方に制約がある。つまり、スロワーは両手でボールを持って頭の上を越して投げなければならず、両足はタッチライン上もしくはその外側に着けておかなければならないのだ(ヨーロッパではこの規則はあまり厳格には適用されないことが多いようだが……)。ただし、投げる方向や距離は自由だ。
もともとスローインというのは、ボールがタッチラインから外に出た場合にゲームを再開するための方法であって、長いボールを投げてそれを武器にしようという発想はなかった。従って、当初のルールでは投げ方にも決まりはなかったのだ。ところが、1880年代にロングスローを投げる選手が出現し、スローインから得点が入る試合が多くなったため、「距離が出ないように」投げ方に制約を課したことによって現在のようなルールに変更されたのだという。
しかし、用具(ボール)とトレーニングの改良によって、再び長いボールを投げる選手が出現する時代となってきたのだ。いずれは、スローインのルールは再び変更せざるを得ないだろう。たとえば、「相手陣内のスローインではタッチラインと直角もしくは自陣方向にしか投げてはいけない」といった変更が考えられる。あるいは、フットサルのようにスロワーにボールが渡ってから投げるまでの時間に制約を加えることになるかもしれない。
2020年度の第99回全国高校選手権は、そんなことを考えさせられた大会だった。