■将来はロングスローを制限するルールも
スローインというのは、合法的に手でボールを扱うことができるプレーである。手を使うだけに正確にボールを飛ばすことも可能なはずだ。もっと研究し、活用すべきプレーであることは間違いない。
今から30年ほど前に知り合ったあるアメリカ人学生はフロリダ州選抜に選ばれたこともあるサッカー経験者だったが、アメリカではスローインのトレーニングを組織的に行っていたそうだ。距離を出すために、通常より重いボールを使ってトレーニングをしていたという。
さすがに、手でロングボールを投げることによって得点を量産するスタイルのフットボールが盛んで、科学的トレーニングが浸透している国だけのことはある。
ボールが改良されてよく飛ぶようになった現在、積極的にこうしたトレーニングを行えばロングスローを投げられる選手はますます増えていくことだろう。
中学生や高校生でなく、プロ選手がロングスローのためのトレーニングを積めば、さらにスピードがあり、距離の出るスローインが可能になるはずだ。
そうして、多くの選手がロングスローを投げられるようになったら、相手陣内でのスローインはことごとくゴールチャンスに直結するだろうし、自陣でのスローインもミスをして奪われると大きなピンチになるので、とりあえず相手陣内まで飛ばしておくようになるだろう。
今では長いボールを投げる時に取り立てて「ロングスロー」なる言葉を用いるが、将来ロングスローが一般的になった時には、短くつなぐスローインのことを特に「ショートスロー」と読んで区別するようになるのだろう。現在、短くつなぐCKのことを「ショートコーナー」と呼んでいるのと同じように。
しかし、ロングスローによって勝負が決まることは、何度も言うようにサッカーというスポーツの魅力を損なうことになりかねない……。
そうなれば、ルールを改正してロングスローを制限せざるを得なくなるかもしれない。