ムヒタリアンが黒子として奔走するものの手詰まりになり、苦し紛れのジェコへのボールはステファン・デ・フライをはじめとした3バックに封じられた。それでも、回収したボールをロメロ・ルカクに当てる、というシンプルに最短距離でゴールを目指すサッカーを展開したいインテルに対し、クリス・スモーリングをルカクにピタリとつけてプレーする位置を下げさせ、もしそこでボールが繋がってもゴールは遠い、という状況を作った。それを逆手にとったラウタロ・マルティネスがスモーリング不在になったスペースを突くプレーもあったが、互いの攻撃が機能不全に陥る消耗戦となった。

 ここまではフォンセカ監督のプラン通りだった。チームとしての働きで上回っても個の力で強引にやられる、というパターンをどう回避するか、という部分をしっかりと対策し、痺れを切らしたインテルが強引に攻め上がってきたところでボールを奪い、カウンターで先制した。

 しかし、そこからが問題だ。

 後半開始からボールを保持して攻勢を強めたインテルに対し、ローマはカウンター狙いで受け身になった。それ自体は自然な流れだったが、時間が経っても修正が見られなかった。当然、受ける時間が長くなれば、いくら上手く守っても個の力でやられる可能性も出てくるし、セットプレーで脅かされる回数も増える。

 これがローマのもう1つの問題点だ。フォンセカ監督は、試合ごとに予め相手の良さを消すためのプランをしっかりとチームに落とし込んでくるが、試合中の相手の修正に対して新たな一手を打つことがない。監督が動かないことで、ポゼッションが得意なチームでありながら、こういう時にポゼッションで相手の勢いや攻撃時間を削ろうとしなくなってしまう。

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